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あの日、マーラーが

【278】あの日、マーラーが

 

あの日、マーラーが

 

【17/07/20】傑作なのか、稚拙な作品なのか、よくわからないでいる。「あの日」の演奏会を、ドキュメントとして保存しておく方法もあったろうが、作者や編集者たちは、フィクションを残すことを選んだ。癪に障ったのは、登場人物の造形に、筆が流されていたところ。評論家を描くときとアイドルオタクを描くときでは、筆致が異なっていたなど。それでは、この本は読まれる価値はないのか。190ページの「芸術は人間が人間であるためにあるのだ。人間が人間であることを証明するために」。この一節のためだけでも、読む価値はあった。